外部CMOで「もったいないスタートアップ」を減らす
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2026年4月、株式会社CMO1号を設立しました。
タイミーの執行役員CMOを退任してから約4ヶ月。「折りを見てまたご報告させてください」と書いた退任記事から、ある程度時間が経ちました。「これです」とお伝えできる段階になったので、設立の経緯と、なぜこの形にしたのかを書き残しておきます。
独立に至った理由は、大きく二つあります。
タイミーには社員として丸6年間、そのうち約4年間はCMOとして携わりました。マーケティング組織の立ち上げから、ブランドの構築、そこにまつわる数々の業務に関わらせてもらいました。
もちろん個人というよりはマーケ組織を含め、会社全体による成果ではあります。タイミーというプロダクト自体の強さもあり、時間と共に多くの人に届くようになりました。
街中で「タイミーで働いてみた」という会話が自然に聞こえてくるようになった時、本社でワーカーさんと話している時。
「ああ、プロダクトが浸透したな」
と感じたんですね。マーケターとして、これ以上ない、冥利に尽きる、という感情に近いかもしれません。嬉しかったし、現在進行形で嬉しいです。
言葉が適切かはわかりませんが、これが率直に感じたことでした。
タイミー在籍中から、多くのベンチャーキャピタルの方々から「うちの投資先の壁打ちをしてみてほしい」というご相談をいただくようになりました。実際にいくつかの会社と会話させていただく中で、プロダクトは良いのに、マーケティングの設計次第でもっと伸びるはずなのに、という場面に何度も出くわしました。
これは自分が手を動かせる領域なのではないか、と。
何社かと話す中で、共通して感じた課題がありました。
まず多いのが、マーケティングがデジタル広告の運用に閉じてしまっているケースです。CPA(顧客獲得単価)を下げることが目的化していて、気がつくと事業全体の成長戦略とマーケティングが切り離されている。広告のPDCAは回っているから、デジタル広告への投資を踏めば事業は伸ばせると考えていた。しかしなぜか事業成長率は横ばい - そういう「縮小均衡」の構造に陥っている状態を、何度か見ました。
次に、自社の提供価値が言語化されていないケース。社内の誰に聞いても「うちの強みは何か」に対する答えがバラバラ。これは特に初期の頃だと構造的な課題で、放っておくとそうなるだろうな、と感じます。ただその状態だとマーケティングのメッセージも定まらないし、営業もプロダクトも、それぞれが違う方向を向いてしまうことになる。
代表的なものを挙げるとこの辺りです。
こうした課題は、現場のマーケターに課題があるというより、経営とマーケティングをつなぐ「翻訳者」が不在であることに起因していると感じています。CEOはプロダクトと資金調達に集中していて、組織上はマーケティング管掌だが、全体設計まで手が回らない。現場は現場で、目の前のKPIを追うので精一杯。その間に落ちている仕事が、実はものすごく大きいのではないかと考えるようになりました。
だからこそ、スタートアップがスケールしていくその過程に貢献することに、自分の経験を使っていくべきなのではないかという考えが次第に強まりました。
CMO1号の事業は、現段階で出せるものとして二つ考えています。
一つ目は、企業のマーケティング戦略を経営レイヤーから支援する「外部CMO」です。
「外部CMO」と聞いてもピンとこない方もいるかもしれないので、少し補足します。
スタートアップやミドルステージの企業にとって、CMOクラスの人材をフルタイムで迎えるのは簡単ではありません。年俸に加えてエージェントフィー、社会保険などを含めると、初年度だけでも相当な投資になります。そもそも候補者の母数も多くはないので、採用に半年以上かかることも珍しくない。
外部CMOは、その数分の一のコスト、かつスピーディーに、経営レベルのマーケティング知見を導入できる仕組みです。
加えて、外部の人間だからこそ持てる客観的な視点があります。社内のしがらみがない分、市場の現実に即した判断ができる。さらに、複数の企業を並行して支援しているからこそ、他業界の成功事例や最新ツールの知見をリアルタイムで還流させることができます。
年商数億〜50億円規模の企業にとっては、本来アクセスしにくい「スケールした企業レベルの知見」を実装できるようになる。ここに外部CMOの価値があると考えています。
なぜ自分が一社に入っていくのではなく、この「外部CMO」の形を選んだのか。理由は「レバレッジ」と「育成」です。
一社に入り込めば、当然時間は集中できます。でも、自分が見てきた「もったいなさ」は一社だけの話ではなかった。複数の会社に同時に関わることで、自分の経験をより多くの場所で活かせるのではないか。一人のCMOが一社に閉じるのではなく、知見をレバレッジさせていく形の方が価値があるのではないかと考えました。
(もちろんそうは言っても時間制約の限界があり、10社も20社もご一緒できるわけではないので、ここをどう構造的に解決していくかも別途考えています)
そしてもう一つ大事なのが「育成」です。
自分が外部CMOとして入る以上、いずれはその会社に自走できるマーケティング組織と、CMOの「2号」を育てて渡すことがゴールになります。いつまでも外部の人間に頼り続ける構造は健全ではない。自分が「CMO1号」として入り、社内に「CMO2号」を育てて卒業する - そういうサイクルを回していきたい。
社名の「CMO1号」には、その思いを込めました。
自分が最初の一人目として入るけれど、ゴールは自分がいなくなること。「1号」がいるということは、「2号」が生まれることを前提にしている。ちょっとベタな名前ですが(笑)、わかりやすさと覚悟を込めて、この名前にしました。
もう一つが、マーケティングニュースレター「THE LEAD」です。
英語圏60以上のマーケティングメディアから厳選したニュースを日本語で届けるほか、CMO経験者目線でのコラムや業界レポートを配信しています。
海外の一次情報に触れたいけど、英語の文献を追い続けるのは大変。そういうマーケターや経営者の方に向けて、実務に落とせる粒度で情報をお届けしています。
これはまだ距離はあるかもしれませんが、マーケティング人材が増え、そうした人材の方々がお互いに学び、お互いに進化する場にしていきたい想いがあります。
外部CMO事業が「個社のマーケティングを深く支援する」仕事だとすれば、THE LEADは「マーケティングの知見をより広く届ける」仕事。まずはここから、この二つで、自分が持っている経験と情報を最大限に活かしていきたいと思っています。
少しだけ、自分のキャリアを振り返らせてください。
「代理店 × 事業会社 × 経営レイヤー」という経験の組み合わせが、外部CMOとしての土台です。
広告代理店でプランニングからデータ分析まで一通りの経験を積んだ後、JapanTaxi(現GO)、メルカリ/メルペイを経て、タイミーへ入社しました。マーケティングマネージャーを経て、執行役員CMOを約4年間務めました。
広告代理店では「クライアントの事業を外から支える」立場。事業会社では一人のメンバーから始まり、最終的には執行役員として「経営の中からマーケティングを動かす」立場。
その両方を経験したことで、経営の言葉とマーケティングの言葉を「翻訳」することが、自分の強みになったのかなと思っています。
タイミーでは、マーケティング方針の策定、実行計画のための予算計画、マーケティング組織の立ち上げ、CMやデジタル広告などの企画・実行、KPI設計と運用体制の構築、toCとtoBなど、色々な領域・色々なフェーズの仕事を経験しました。
スタートアップのスピード感の中で、限られたリソースで最大のインパクトを出すにはどうすればいいか - 常にそれを考え続けた6年間でした。
正直な気持ちを書いてしまうと、今回の決断には怖さもありました。
タイミーという急成長のプロダクトや、それを成していた周囲の人々の力があったから出せた成果なわけで、自分の力だけでどこまでやれるのか。そもそもタイミーで充実した時間を過ごしていた中で、ある意味ポジションを手放すことへの不安。
また、そもそも「外部CMO」というものがどれほど求められているかも、やってみないとわからない。
でも他方で、自分が課題だと思ったことを解決するべきだ、と信じ、自分の責任で会社をやっていくことは、それはそれで清々しさがあります。ゼロから自分でやっていかねばという決意と共に。
マーケティングの力で「もったいない」を減らしていく。スタートアップがスケールしていく、その過程にマーケティングで伴走する。その事業のポテンシャルを、戦略とクリエイティブとメディア、体験設計の力で引き出していく。その中で、自社の事業もつくっていきたい。
大きなことを言うようですが、それが現在の自分のやりたいことです。
タイミーのバリューで一番好きなのが「やっていき」でした。
会社は変わりますが、魂は持ち続けたいと思います。
今回は、心機一転、ご挨拶の意味も込めた記事を書きました。
これからも、この場所でコツコツと、学びや考えたことを書いていきます。
引き続き、よろしくお願いいたします。
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【補足】
本記事は、2026年4月2日にnoteで公開した「これからのこと|株式会社CMO1号をつくりました」を元に、1st-cmo.one用に再構成したものです。
元タイミー執行役員CMOの中川祥一が2026年4月に設立した、スタートアップ向けの外部CMO・マーケティング顧問サービスを提供する会社です。外部CMO事業と、マーケティングニュースレター「THE LEAD」の二事業を運営しています。
「自分が一人目(CMO1号)として外部CMOで入り、社内にCMO2号を育てて卒業する」という事業設計を表現した社名です。いつまでも外部の人間に頼り続ける構造は健全ではないという考えから、自走できるマーケティング組織と次のCMOを育てて引き継ぐことをゴールに据えています。
二つの理由があります。一つは、タイミーで約6年間、うち約4年間CMOとして携わり、マーケターとしてのミッションに一定のやり切りを感じたこと。もう一つは、タイミー在籍中にベンチャーキャピタル経由で多くのスタートアップと壁打ちする中で、プロダクトは良いのにマーケティング設計次第でもっと伸びるはずの「もったいない」会社が多かったことです。
企業のマーケティング戦略を経営レイヤーから支援する役割です。フルタイムCMOを採用する数分の一のコストで、経営レベルのマーケティング知見を導入できる仕組みで、特にスタートアップやミドルステージの企業に適しています。外部の客観的な視点と、複数企業を支援することで得られる横断的な知見が特徴です。
中川が外部からスタートアップを見てきた中で共通して感じた課題が二つあります。一つは、マーケティングがデジタル広告の運用に閉じてしまい、事業全体の成長戦略とマーケティングが切り離されている「縮小均衡」状態。もう一つは、自社の提供価値が言語化されておらず、社内で「うちの強みは何か」への答えがバラバラな状態です。多くは、経営とマーケティングをつなぐ「翻訳者」が不在であることに起因しています。